今年初めて、エミー賞ドラマシリーズ部門の作品賞が非英語作品のテレビドラマ『幕府将軍』に贈られた。
大阪の歴史を描いたこのドラマは、英国の航海家ジョン・ブラックソーンが日本の海岸で座礁する場面から始まる。地元の武士に発見されたブラックソーンは、当時の権力の中心地である大阪城へ連行される途中、英国帝国の栄光を誇りに思うジョンは、大阪を「悲惨な場所」と評する。しかし、大阪城の門をくぐり、その壮大な都市規模を目にした瞬間、言葉を失う。
17世紀の江戸時代に大阪城は、便利な水路を活かし、米市場や薬品、布地などの集積地として日本全体の供給網を支えていた。明治維新を迎える19世紀には商業都市から工業都市へと変貌を遂げ、繊維、鉄鋼、造船、機械産業が盛んになり、「東洋のマンチェスター」と称された。
第二次世界大戦後、大阪は製造業の中心地として復興。電子、化学、自動車部品製造分野で強みを発揮し、松下(現・パナソニック)やシャープなどのローカル企業が世界的ブランドへと成長を遂げた。同時に医療や製薬産業の拠点としても発展し、医療研究開発センターが次々と設立された。
一方、1990年代以降、伝統的な産業はコストの低い他国へと移転。関東地方では東京が金融、情報技術、サービス産業で急成長を遂げ、技術革新と金融の中心地となる一方で、関西地域の経済的存在感は低下した。
関東と関西は常に競争関係にある。大阪を中心とする関西地方政府は2025年の万国博覧会を重要視し、1970年の大阪万博が大阪経済を飛躍的に成長させた成功を再現すべく、準備を進めている。
安倍政権の経済政策を受け、日本政府が経済の国際化を推進する中、関西地方政府は産業の高度化を目指し、革新、情報技術、バイオテクノロジーを積極的に導入。万国博覧会を契機に、大阪はイノベーションを核とした経済の再活性化を図ろうとしている。
大阪イノベーションハブ:スタートアップと企業をつなぐ拠点
台湾の国家スタートアップブランド「Startup Island TAIWAN」が2024年、関西ビジネス訪問団を率いて大阪イノベーションハブ(OIH, Osaka Innovation Hub)を訪問。29組の台湾スタートアップが参加し、大阪商工会議所、IBPC Osaka、阪急阪神グループ、三井住友銀行など、地域を代表する組織や大企業を訪れた。
大阪市がイノベーション促進の中核機関として設立したOIHは、2013年から地域のイノベーションエコシステムを推進。「Hack Osaka」や「Global Innovation Forum」など、毎年250以上のイベントを開催し、世界中の起業家を惹きつけている。
オープンイノベーションはOIHの主要な取り組みの一つであり、Panasonic、シャープ、関西電力といった大阪を拠点とする著名企業が協力パートナーとして参画している。アクセラレータープログラムでは、提携企業が技術専門家やアドバイザーを派遣し、スタートアップの製品開発やビジネスモデル構築を支援している。
また、医療テクノロジー分野も大阪の強みの一つであり、OIHは地域の医療およびライフサイエンスコミュニティと緊密に連携し、再生医療や幹細胞研究の推進に力を注いでいる。特に注目されるのが、大阪の21の民間機関が共同で設立した総合財団法人「中之島クロス」(Nakanoshima Qross)。医療機関、大学、研究機関を結集し、バイオテクノロジーのスタートアップに対し、ワンストップで連携支援やビジネスサービスを提供。大阪の医療関連産業におけるイノベーションを力強く推進している。
中之島クロスは2021年に設立され、大阪ライフサイエンスピッチコンテスト(Osaka Life Science Pitch)を定期的に開催し、ライフサイエンス分野に特化したアクセラレーターとして、スタートアップに業務支援や規制コンサルティングを提供。日本の医療機器や医薬品の認証取得を支援し、迅速な日本市場参入を可能にしている。
産業分業が細密で信用を重んじる日本では、武田薬品工業のような大手医薬品企業が中之島クロスのアクセラレーターに参加することで、スタートアップが新技術の市場化を目指す足がかりとなっている。
さらに、大阪のスタートアップコミュニティを支える存在として、日本のクラウドホスティングサービスを牽引する「Sakura Internet」が挙げられる。1996年に大阪で創業した同社は、日本最初期のインターネット企業の一つ。データセンター、クラウドサービス、サーバーホスティングで培った深い技術力により、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要な推進役を担う。
Sakura InternetはOIHのリソースを活用し、多くのスタートアップとの協力を展開。オープンソース技術のイノベーションにも注力し、日本国内のスタートアップコンテストでスポンサーとして頻繁にその名を連ねる。日本のソフトウェア業界における中核的存在としての地位を確立している。
大阪イノベーションハブ:スタートアップと企業をつなぐ拠点
台湾の国家スタートアップブランド「Startup Island TAIWAN」が2024年、関西ビジネス訪問団を率いて大阪イノベーションハブ(OIH, Osaka Innovation Hub)を訪問。29組の台湾スタートアップが参加し、大阪商工会議所、IBPC Osaka、阪急阪神グループ、三井住友銀行など、地域を代表する組織や大企業を訪れた。
大阪市がイノベーション促進の中核機関として設立したOIHは、2013年から地域のイノベーションエコシステムを推進。「Hack Osaka」や「Global Innovation Forum」など、毎年250以上のイベントを開催し、世界中の起業家を惹きつけている。
オープンイノベーションはOIHの主要な取り組みの一つであり、Panasonic、シャープ、関西電力といった大阪を拠点とする著名企業が協力パートナーとして参画している。アクセラレータープログラムでは、提携企業が技術専門家やアドバイザーを派遣し、スタートアップの製品開発やビジネスモデル構築を支援している。
また、医療テクノロジー分野も大阪の強みの一つであり、OIHは地域の医療およびライフサイエンスコミュニティと緊密に連携し、再生医療や幹細胞研究の推進に力を注いでいる。特に注目されるのが、大阪の21の民間機関が共同で設立した総合財団法人「中之島クロス」(Nakanoshima Qross)。医療機関、大学、研究機関を結集し、バイオテクノロジーのスタートアップに対し、ワンストップで連携支援やビジネスサービスを提供。大阪の医療関連産業におけるイノベーションを力強く推進している。
中之島クロスは2021年に設立され、大阪ライフサイエンスピッチコンテスト(Osaka Life Science Pitch)を定期的に開催し、ライフサイエンス分野に特化したアクセラレーターとして、スタートアップに業務支援や規制コンサルティングを提供。日本の医療機器や医薬品の認証取得を支援し、迅速な日本市場参入を可能にしている。
産業分業が細密で信用を重んじる日本では、武田薬品工業のような大手医薬品企業が中之島クロスのアクセラレーターに参加することで、スタートアップが新技術の市場化を目指す足がかりとなっている。
さらに、大阪のスタートアップコミュニティを支える存在として、日本のクラウドホスティングサービスを牽引する「Sakura Internet」が挙げられる。1996年に大阪で創業した同社は、日本最初期のインターネット企業の一つ。データセンター、クラウドサービス、サーバーホスティングで培った深い技術力により、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要な推進役を担う。
Sakura InternetはOIHのリソースを活用し、多くのスタートアップとの協力を展開。オープンソース技術のイノベーションにも注力し、日本国内のスタートアップコンテストでスポンサーとして頻繁にその名を連ねる。日本のソフトウェア業界における中核的存在としての地位を確立している。
大阪2025年万博、スタートアップエコシステムの進化を牽引
2025年大阪万博のテーマ「未来社会のデザイン」は、イノベーションと持続可能な発展を掲げ、世界中のスタートアップに新技術を披露する場を提供する。「イノベーションテクノロジーゾーン」では、地元企業と国際的な連携を促進し、新たな協力の機会を創出する狙いがある。
万博の構想からも、大阪府がイノベーションと起業に注力する姿勢が浮き彫りになる。大阪をグローバルイノベーションの拠点の一つとして位置付け、スタートアップエコシステムを世界に拡大することを目指している。「2025年大阪綱領」では、今後5年間で大阪市内のスタートアップを倍増させるとともに、政府、企業、スタートアップ間の連携を強化。国際的なスタートアップの誘致にも力を入れる方針を示している。
2022年に岸田文雄前首相が提唱した「日本スタートアップ元年」は、2027年までに100社のユニコーン企業と10万社のスタートアップを創出し、日本をアジア最大の起業拠点の一つにすることを目指すものだ。この目標に向けて東京が注目を集める一方、大阪もまたスタートアップエコシステムの構築で急速にその存在感を高めている。