Profet AI:ノーコードAIで製造業を変革
2018年に設立された台湾のスタートアップ「Profet AI」は、製造業を主要な顧客として、簡単な操作で使用できるAIツールを提供している。同社のノーコード自動化マシーンラーニングプラットフォームは、製造業が直面する重要な課題であるデータワークフローの複雑さやデータサイエンティスト不足の問題を解決する。
台湾は製造大国であり、従来、製造プロセスにおける価値ある知識や洞察は熟練技術者に依存していた。これらの技術者は企業にとって貴重な資産である一方、伝統産業における技術継承の課題ともなっていた。
デジタル化を推進し、こうした専門知識をデータ化するには、専任のソフトウェアエンジニアやデータサイエンティストの関与が必要だ。しかし、データサイエンティストはソフトウェア業界でも希少であり、ソフトウェアリソースが限られているハードウェア製造業にとっては、さらに困難な課題となる。
製造業プロセスのデジタル化とデータ化には、新たなデータサイエンスの活用が不可欠である。AIの自動化特性を活用し、ノーコード/ローコードのソリューションを提供することで、中小規模の製造業は効率的にスマート化を実現し、製造技術の継承やグローバル展開を加速させることが可能となる。(写真:Profet AI 提供)
Profet AIのプラットフォームは、ノーコード自動化マシンラーニングを通じて企業内部でAIモデルを構築できる仕組みを提供している。これにより企業はソフトウェアエンジニアを雇用する必要がなく、以下の3つのステップで完了する。
- 専門知識の取得:熟練技術者や製造ラインの従業員が、Profet AIのインターフェースを使用して、生産プロセスに関連するデータを入力する。例えば、製品品質を決定する重要なパラメーターや、生産ラインにおけるさまざまな変数の意味を記録する。
- 自動モデル構築:Profet AIはこれらのデータに基づき、最適な機械学習アルゴリズムを選択してモデルを構築し、入力データに応じてパラメーターを調整する。
- 高い互換性を持つデプロイ:前述のステップを繰り返すことで、AIモデルを訓練し、調整を行い、製造工場の既存システムに迅速かつ円滑に統合できる。
Profet AIの創業者である吳培彰(ウー・ペイツァン)氏は次のように説明する。「Profet AIは、熟練技術者の経験をAIモデルに変換することで、工場の拡張や複製が必要な時に、そのAIモデルを別の工場に移行するだけで対応できます。」この方法は、グローバルに展開する企業に特に適しており、知識や専門技術を簡単に国際的に移転することが可能だ。
Ubestream:リアルタイム翻訳で言語の壁を打破
Ubestreamは、言語コミュニケーションの障壁を解消することに注力し、リアルタイム翻訳プラットフォーム「AI speak」を提供している。GPUの強大な計算能力を活用し、遅延なしで多方向かつ大規模なリアルタイム翻訳を同時に処理できるSaaSソリューションを実現している。
Ubestream創業者の蘇育民(スー・ユーミン)氏は、AIの技術基盤と市場ポジショニングを説明するため、AIを以下の4つの領域に分類した。
1. データのAI
データから洞察や知識を抽出することに特化した分野で、データマイニング、予測モデリング、大規模データセットを分析・学習するアルゴリズムの開発を含む。製造業向けにデータ駆動型AIモデルを提供するProfet AIがこの分野の例として挙げられる。
2. 画像/ビジョンのAI
コンピュータビジョンや画像認識技術を含み、AIシステムが画像や動画内の視覚情報を「見る」ことを可能にする。物体検出、画像分類、顔認識といった分野に応用され、特に自動運転車の路面状況認識が重要な例だ。
3. 音声のAI
AIシステムが人間の音声を理解し処理する技術に特化した分野で、音声認識、音声合成、音声ベースのユーザーインターフェースなどを含む。Ubestreamのリアルタイム翻訳プラットフォーム「AI speak」は、音声AI技術を利用して話し言葉を文字に変換する。
4. 語義のAI
自然言語の意味や文脈を理解し処理することに特化した分野で、自然言語処理(NLP)、機械翻訳、感情分析などが含まれる。Ubestreamのプラットフォームは、語義を理解するAIを高度に活用し、翻訳間で前後の文脈を正確に保つことを可能にしている。
蘇育民氏は、これらの分野を理解することで、企業が自身の課題やニーズに最適なAIソリューションを見極めることができると語る。生成型AIの成熟は、特に後半の2つの技術領域の急速な進展により注目されるようになった。
Ubestreamの製品について言えば、音声認識や翻訳が絡むため、当初から国際市場をターゲットにしていた。日本市場を選択した理由は、リアルタイム翻訳機能に対する高い需要が日本市場で顕著であるからだという。「日本市場ではリアルタイムで解決するソリューションへのニーズが台湾よりも大きいことに気づきました」と蘇育民氏は語る。
日本市場進出:効率的なチーム体制と現地パートナーシップの活用
Profet AIとUbestreamは、それぞれ異なる戦略で日本市場の開拓に挑んでいる。
Profet AIは、大企業から中小企業まで幅広くサービスを提供するために、堅実なチャネルのパートナーシップネットワークの構築に注力している。これにより、コンパクトで俊敏なチーム体制でも市場のカバー率を最大化することを目指している。
一方、Ubestreamは、ターゲット市場における拠点設立の重要性を強調している。創業者の蘇育民氏は「ビジネスで最も重要なのは人脈です」と語り、現地パートナーとのネットワーク構築と信頼関係の確立が鍵であると強調した。この戦略により、Ubestreamは日本市場の特定のニーズに合わせたソリューションを提供し、現地パートナーとの強固な関係を築いている。
さらに、両社は台北市政府が推進する「スタートアップビザ(創業家護照)」プログラムの利点についても言及している。台北市は台湾のスタートアップエコシステムを国際的に拡大させる取り組みを進めており、このプログラムでは海外拠点を設立するスタートアップ企業に対して、コワーキングスペースの賃貸料補助を提供している。
Profet AIの創業者である吳培彰氏は、このプログラムの柔軟性を称賛し、「コワーキングスペースは初期段階のスタートアップにとって非常に有益で、大規模な常設オフィスを管理する負担を避けることができます」と述べた。さらに、Profet AIの顧客が日本全国に分布していることから、コワーキングスペースを活用することで、日本各地の施設を訪問し、顧客ニーズに応じた効率的な対応が可能になったと付け加えた。
一方で蘇育民氏も同意し、「政府の支援は海外市場への進出を目指すスタートアップにとって安心感と自信を与えます」と述べた。
「政府支援プログラムとの連携は、会社の信頼性を高め、海外市場での潜在顧客やパートナーに対する保証となります。特に日本では信用と信頼が非常に重要です。台北市政府の補助を受け、良好な環境のコワーキングスペースで運営することは、限られたリソースを持ちながらも信頼性が求められる小規模企業にとって非常に価値があります」と蘇氏は語った。